前回→9/3(日)のコミティア145に向けて、144で入手した本をまとめておく回
12/3(日)に東京ビッグサイトでコミティア146が開催されます。前回のときと同様に、1つ前のコミティアで手に入れた本をまとめておきます。次回はもうちょっと早いタイミング(というかイベント後すぐ)に出せるようにしたいですね。基本的には145での新刊をメインに紹介します。見出しのカッコ内はサークル名です。
Contents
カウ・リバー『健康体』『そういう人』(しちわれ)
サークルカットに惹かれて行ってみたところ、凄すぎてびっくりしたマンガ。
とにかく何もかもが絶妙。なんとも言いようのない些細なエピソードをドライなタッチで描く佇まいが魅力的です。「こういうこともあるだろう」と思わせるリアリティと、「ここにしかないに違いない」と思ってしまう出来事の固有性が見事に両立していて、忘れがたい読後感が残ります。
山吹『今日も平和な2年3組』『刺繍の男』
第83回(2023年前期)ちばてつや賞の準大賞「ネギのゆくえ」の山吹さんのマンガ。この「ネギのゆくえ」が大変面白かったので、後日譚的な本が出ると知り、既刊と合わせて入手しました。
良い具合に肩の力が抜けた軽やかな印象ながら、マンガはめちゃくちゃうまい。とても安定感のあるコメディ。商業誌でも活躍されるタイプの方ではないかと思います。現在は『モーニングツー』で「こどもどろぼう」という連載をされており、面白いです。単行本楽しみ。
絵な子『秘境冒険探検記 1巻』(KONGARI PENGUIN)
当日気になって入手して、べらぼうに面白かったマンガ。
前のコマで言っていたことを次のコマであっさりと覆し続ける、恐ろしく軽いキャラクターたちの珍道中。とにかく自由、気まま、最後は何とかなる、の「マンガ的」精神に元気が出てきます。「目標を決めないと決めた!うーん清々しい。どこに行ってもいいのだ。」
さとかつ『人魚学入門 上』(ウツボカズラ病)
背景作画の緻密さと海の生き物に惹かれて入手したマンガ。
舞台となる水族館や船の描写が非常に魅力的。ストーリーも後半にかけて想像以上にサスペンスフルになっていき、しっかり続きが気になります。魚類への趣味的なこだわりを感じますが、冒頭でいきなり小さめの魚がぶつ切りにされて水族館の餌になっていて、なんだか信頼できる!と思いました。
淵本宗平/ゐずみU子『相原』(ひのえうま)
リソグラフで印刷されたというピンクと水色を基調としたマンガ。
夏の思い出的なノスタルジーを感じさせる内容と、色を重ねたり輪郭を二重化したりしてブレたように見せる表現がマッチして、爽やかでエモーショナルな印象を生んでいます。印刷・造本含めてとても面白い本です。
古山フウ/サイトウマド/高杉千明/町田メロメ/大町テラス/コルシカ/坂本奈緒/ながしまひろみ/水元さきの/メグマイルランド/石山さやか『もぐらホリデー』
前回入手したマンガがめちゃ面白かったコルシカさんが参加している合同誌。
普段はマンガよりもイラストレーターとして活動されているような方も多く、アートスタイルにバリエーションがあって楽しい本です。坂本奈緒さんによるセリフのないマンガが可愛らしく強く印象に残りました(マンガは初めて描いたとのことでびっくりです)。
津村根央『スリー・グッド・ドルフィンズ ハイウェイ』(惰眠野郎ファイナル)
個人的に最近のコミティアでの恒例となってきた津村根央さんの「ドルフィンズ」新刊。
今回は異様にスピーディな運動が描かれるシーンがあり、この絵柄でもこんなにスピード感が出せるんだ、と感動してしまいました。「バッド」とつぶやくサメ(バッド・シャーク?)も一瞬だけ登場し、ますます面白くなってきた「ドルフィンズ」。今回も新刊があるようなので楽しみです。
ちょめ『探偵小説突撃隊戸槇小班』(室外機室)
前回まとめて手に入れたマンガが全て面白く、楽しみにしていたちょめさんの新刊。
これだけのクオリティのマンガをこのペースで出せるということに、ただただ感心するほかありません。謎解きパズル的な面白さで読ませつつ、最後には少しの不思議さとワクワク感が残る鮮やかな短編です。
おかだきりん『ぼくらは事件簿のなか』(鳩殴り本舗)
こちらも個人的には恒例となったおかだきりんさんの新刊。
前回とは打って変わって、落ち着いた人間ドラマでじっくり読ませるマンガです。色々なジャンルで描けると同時に、どのジャンルを描いてもきちんと「らしさ」が感じられるあたり、作家としての強さを感じます。
鈴木淳也『大友克洋全集解説 1 銃声』
大友克洋全集解説シリーズ、『8 童夢』に続く『1 銃声』。
ファンの間でも幻となっていた作品を含む初期作をまとめた『全集1 銃声』の解説本です。『鉄腕アトム』や『鉄人28号』を見て育ち、石森章太郎を真似て肉筆回覧誌を作ってみる、大友も(ある意味では典型的な)60年代の漫画少年だったようで、何だか不思議な感じがしました。もちろん、そこからあの乾いた画面に辿り着くところが面白いわけですが、その過程でかなり実験的なことをやっていたっぽいということも解説から窺えます。ここから『童夢』までの展開はかなり気になるので、続刊も楽しみです。