今週末の土曜(6/22)に、日本マンガ学会の大会で研究発表をします。マンガ学会での発表はもう4年連続(最初の2年はオンライン)で、定期的な締切として活用しているところもあります。内容は、新関健之助という作家による1930〜40年代の子供向けマンガを分析するものです。新関作品ではしばしば飛行機の描写が目立つのですが、そういった場面を通して立体的な空間やダイナミックな運動の表現が発達したのではないかと考えています。下記に要旨も転載しておきます。
今回のマンガ学会は両日とも参加予定で、歴史学習部会の頒布ブースでは『FLiP vol,1』のほか、無料冊子『研究費で作った本』も頒布するつもりです(1日目は基本的に発表会場の方にいると思いますが)。ぜひお気軽にお声がけください。
新関健之助と飛行機 戦前・戦中期の子供マンガにおける空間表現の立体化
「戦前のマンガは構図が平面的である」という説は一般に根強い。しかし、この種の主張は多くの場合「のらくろ」を中心とする田河水泡の作品を例とすることで成立しており、広く戦前のマンガを踏まえてその妥当性が検討されてきたとは言い難い。本発表は、1930 年代半ばから 40 年代初頭にかけて中村書店から刊行された新関健之助によるマンガ作品を取り上げ、戦前の子供マンガにおける立体的な空間表現の試みを明らかにする。
新関健之助は、大城のぼる・謝花凡太郎とともに、1933 年から 1943 年にかけて中村書店から刊行された「ナカムラ・マンガ・ライブラリー」(1933-1939)「ナカムラ絵叢書」(1939-1943)シリーズを支えたマンガ家として知られる。本発表では、新関の仕事の中でも特に飛行機の描写が豊富な『チビ連隊長』(1934)と『空の中隊』(1943)を中心的に取り上げ、飛行機というモチーフに注目しながら、その運動や空間の表現について分析していく。
新関はしばしば実在の軍用機をモデルとした飛行機を描いており、その運動表現にも大きな関心を寄せていたように見受けられる。これらの表現の分析を通して、戦争に沸く当時の日本社会において子供マンガにとっても人気のモチーフだったと考えられる戦闘機を描くなかで、マンガの画面における立体的な空間表現が試みられていった過程が浮かび上がってくるに違いない。