『FLiP vol.1 日本マンガ学会歴史学習部会誌』の表紙

『FLiP vol.1 日本マンガ学会歴史学習部会誌』をよろしくお願いします(BOOTHにて電子版頒布中)

日本マンガ学会という組織があります。2001年に発足した比較的新しい(とはいえそれなりに積み重ねもある)学会です。日本でマンガを対象とした研究をする場合、成果発表の場としてまず候補にあがるところだと思います。

他の多くの学会と同様、テーマごとに有志で活動を行う「部会」制度があります。私も歴史学習部会に参加しているのですが、このたび『FLiP』という部会誌を発行しました。主に2022年度に行った活動の成果をまとめたもので、日本のマンガやアニメの歴史に関心がある方にとっては、かなり重要かつ面白い内容になっていると思います。

主なコンテンツは、2つあります。1つ目はComics and the Origins of Manga: A Revisionist History(『コミックスと”物語マンガ”の起源』)の著者であるアイケ・エクスナ氏を招いたシンポジウムの記録です。この本は、戦前期の日本において、アメリカ発のコミックスが輸入されるなかで現代的なマンガ表現が形成されていった過程を詳細に論じたものです。著書についてのエクスナ氏の講演および、佐々木果・新美琢真・鶴田裕貴の三氏が加わった討議の様子が収録されています。私(陰山)も、シンポジウムを受けて短い解説を書きました。

もう1つは、マンガ家・アニメーション作家の鈴木伸一氏へのインタビューです。「オバケのQ太郎」などの藤子作品にしばしば登場するラーメン大好き小池さんのモデルとしても知られる鈴木さんですが、トキワ荘からおとぎプロ、スタジオゼロと、戦後日本のマンガ・アニメの重要シーンをことごとく目撃されており、とても面白いお話が聞けました。インタビューに加えて、トキワ荘マンガミュージアム学芸員の川島さん、アニメーション史研究者の森下さんが、それぞれの視点から鈴木さんの仕事を解説した文章が収録されています。

『FLiP vol.1 日本マンガ学会歴史学習部会誌』は、7/1-2に開催された日本マンガ学会の大会で頒布しました。今後は原則的に電子版(PDF)のみの配布となります。。こちらは500円ですので、ぜひお気軽にBOOTHからお求めください。個人的には、InDesignと格闘しながら本文のDTPをとても頑張ったので、ぜひそこも見てみて欲しいです。ちなみに、とても目を引く表紙は、20世紀初頭アメリカの新聞で連載されたWinsor McCayによる傑作コミック・ストリップLittle Nemo in Slumberlandをもとに、新美さんがデザインしてくれました。内容も見栄えも素敵に仕上がったと思うので、どうぞよろしくお願いします。