コミティア150(2024/11/17)で入手した本

恒例コミティアのまとめ記事(過去の回はこちら→https://ryokageyama.com/blog/category/series/comitia/)。前回は40周年記念回ということで大変な賑わいだった。サークル数的にも体感的にも総じて通常の1.5倍ぐらいの規模だったのではないか。個人的にコミティアにはあまりお祭り感を求めていないのだが、盛り上がるのはサークル側にとっても良いことだろうし、たまには悪くないなと思った(正直なところ毎回この規模だときついなとも思った)。

ここ1年ほどは欠かさず公式のPush&Reviewに投稿してきたが、残念ながら今回は出せなかった。これは40周年云々とは特に関係なく、シンプルに締切前後に余裕がなかったという不甲斐ない理由による。よりによってこの回でとは思いつつ、151のティアマガを見たところ自分が推したかったものが結構掲載されていたので勝手に少し安心した。読んでいる人は読んでいるという信頼感があるのはコミティアの良いところだ。出せなかった代わりというわけではないが、全体の規模感にも合わせ今回は作品数1.5倍でお届けする。やはり節目ということもあり大きめのものを出しているサークルが多く、毎回楽しみに読んできた方のまとめ本など感慨深いものがある。

肥溜め『空虚』(チワワ物語センター)

今回最大の出会いであり、マンガって面白すぎると思った本。新しいコマが現れるごとに事態が逆転し続けるような感覚があり、それに乗せられていくといつのまにかとんでもないことになる。前のコマを裏切り続けながらそれでもなお確かに積み上がるものがあるというのは、読み続けてしまうマンガの条件だ。良いものを読んだ、としみじみ思った。

カウ・リバー『エンゼル 後編』『ろっこつ』(しちわれ)

145で手に取って以来、毎回新刊を楽しみにしている。『エンゼル』後編が出て本当に嬉しい。「川って、見てられますね」の顔が良すぎるし、そもそも表情がずっと良いのだと改めて気づいた。ちなみにこの『エンゼル』でモーニング月例賞に入賞されたよう。勝手ながら嬉しい気持ちと当然だろうという気持ちがある。145のときのレビューを読み直してやはりその通りではと思ったので、再掲しておく。

「こういうこともあるだろう」と思わせるリアリティと、「ここにしかないに違いない」と思ってしまう出来事の固有性が見事に両立していて、忘れがたい読後感が残ります。

うし『太陽の犬』(小丘陵地)

146から毎回楽しみにしてきたうしさんの過去作まとめ(+α)本。画面のスタイルは作品ごとに少しずつ異なるが、ことごとく線が良い。しなやかで伸びやか。クールでどこか清々しい語りのトーンに見事にマッチしている。描き下ろしのおまけなどキャラっぽい作品も楽しい。

朝日奈麦『観察 #4』(たねまき)

147から追っている朝日奈麦さんの短編集シリーズ最新作。日常のさりげない出来事を切り取るのが上手いという印象を持っていた(し、それも確かな)のだが、よく考えるとかなり変な話も混ざっていて可笑しい。特にラストの2ページの作品、妙なキレがあって最高。

津村根央『スリー・グッド・ドルフィンズ①』(惰眠野郎ファイナル)

スリー・グッド・ドルフィンズがついに単行本に。144で「既刊も全部ください」をやって以来のファンなので感慨深い。そこからおよそ2年の活躍もすごい。巻末にはプロトタイプ的な「初期モノクロ版」が収録されており、その時点ですでにバッド・シャークが登場していることが分かったのもグッド。

みやいりんたろう『にせブックスシリーズ2.5 愛犬との日々(準備号)』とシール(にせ犬

148から始まった大人気にせ犬シリーズ。随所に滲み出ていたヒヤッと感がほのぼのエッセイスタイルによって新たなフェーズに入っている。完成版が楽しみ。

あとこのシールたち(特に黒枠の写真のやつ)めちゃくちゃ良くないですか。

什器『マイリトルガントリークレーン』(旋回橋構造)

146以来、毎回変わった造りの本を楽しみにしている。今回も太いとじ紐がアクセントのカッコいい本なのだが、中身のマンガがこれまで以上にめちゃくちゃで面白すぎた。縦ロールお嬢様のガントリークレーンって何ぞ。

『セーターを編もう!』『きれいなおねえさん』(minimal子ちゃん)

147で机の上に巨大な編み玉(編み玉?)を載せ、とにかく勢いのある異様なコピー本を売っていた方。その後毎回参加し、1回に2冊本を出したりしていて本当にすごい。絵がどんどん良くなっているし(『セーターを編もう!』)、長めのストーリーも面白く(『きれいなおねえさん』)、読むと妙にテンションが上がってしまう。

山本駿平『レイクサイド・ハイウェイ』(果物ナイフ)

実はこれだけ当日には入手できなかった。自分の中では早めのつもりで行ったのだが見事に完売しており、後日通販で手に入れたもの。149で出されていた作品に続いて、画面がカッコ良すぎる。カッコいい場面の連続がカッコいい話になっていくのをただただ眺めるほかない。

淋そそぐ『いつ・またか』(PONUNF)

こちらも149から続けての見事な作品。終始緊張感が全く途切れないままジリジリと進み、最後に弾けながら何か大きなものを残して終わる。終盤の印象はもちろんのこと、途中も忘れ難い場面ばかりだ。

ざまよし子『友だちの話』(生きるのがたのしい)

曖昧な距離感の「友だち」同士の関係性を描いた一冊。学生時代とのちに再会してからの展開を交互に描く構成が巧み。2人の関係への理解が静かに深まっていき、終盤にはなんとも言えない切なさと納得感のようなものが不思議と軽やかに訪れる。

柚木いつぐ『お楽しみはこれまでも』(肌身離さず離されず)

可愛らしい絵で暖かみある物語が描かれつつ、どことなく寂しさも滲むバランスが絶妙。風景と人物の関係が常に良い。全体的に冬の入口のようなムードがあり、空気感が沁みる。

井上まち『南天の手』(ふたりごと)

これまでの作品とは絵のスタイルがかなり違っているようで、グレートーンが印象的。いつもの緻密かつ温度感のある線画も素敵だが、「冬の暖かさ」のようなものを描くという挑戦が細やかな階調によって成功していて見事。ティアマガ151の表紙も担当されており、これも本当に素晴らしい。

ロ口ロ『灼熱!京都殺人紀行』(鹿の行方

とにかく熱量がすごい。灼熱なのは作品そのものという感じだ。映画村のシークエンスや終盤の見開きなど大胆な画面が次々に現れて目が離せなくなる。これだけのページ数をこの迫力で読ませるのは並大抵のことではない。

NOU4/ネリ夫/津村根央/あいた/ながいぬ/デートスポット/コイソ『#3 Nothing Special』(軌道ラウンジ)

津村さんや147の傑作『ながいぬの目指せ!歯磨きマエストロ』のながいぬさんが参加されたエッセイ合同誌。とにかく趣味の話が好きなので全体的に楽しかった。カメラ欲しいな。